
住宅には法定耐用年数というものがあります。これは、不動産の減価償却費用を算出するために国が決めた年数なので、この耐用年数を超えたとしても住めなくなるわけではありません。しかし、耐用年数に達すると満足できるほどの性能を発揮しなくなるケースが多いのも確かです。
この記事では法定耐用年数が迫ってきたとき、性能に不満を感じたときにどういう行動をするべきかを解説していきます。
3つの選択肢
住宅の現状に不満を覚えたときに採れる選択肢は大きく分けて3つあります。
「建て替え」と「リフォーム」はほぼ半数ずつで、約1割の方が「売却して移り住む」という選択をしているようです。
建て替える

現在の家を取り壊し、完全に建て替える方法です。
建て替えのメリット
- 今までの間取りと関係なく、思い通りの間取りや外観に変更できるため、家族の新しいライフスタイルに対応できる。
- 最新の耐震性・耐久性・断熱性を確保できる。
- 快適で省エネ、かつ安心安全な家にすることができる。
といったことがあげられます。
建て替えのデメリット
- リフォームと比べると費用が多く必要となる。
- 新しい規制により、建て替え前と同規模の建物を確保できない場合がある。
といったことがあげられます。
建て替えを選ぶ方が良い場合とは
建て替えの特徴を一言で表すと「費用はかかるが、良い家になる」ということです。
現在の状況が以下の項目に当てはまれば、建て替えを優先してみるとよいでしょう。
- 今の住居を終の棲家にするつもりで、かつその家を継承する人も決まっている場合
- 現在の住まいへの不満が、構造・設備・間取り・耐震・断熱・採光・通風・調湿・結露など多方面にわたる場合
- 老後の資金も確保できているなど、資金に余裕がある場合
- 希望に沿うようにリフォーム工事をすると、その費用が建て替え費用の7割を超える想定になる場合
- 必要十分なだけでなく最新の耐震性能、断熱性能、耐久性をもった家に住みたい場合
- 家が傾いていたり、地盤に不安がある場合
- 新築用の各種補助金や優遇制度を活用したい場合
リフォームする

屋根・外壁・設備の劣化や耐震・断熱・採光・通風・調湿・結露などの機能に不満があるときに特定箇所のみを改修します。
完全に自由ではないものの間取りを変更するリノベーションという手段もあります。
リフォームのメリット
- 建て替えに比べて費用が安い。
- 建て替えに比べて短い工期で完成する。
- 特定の場所だけを工事できるので、改修の目的が明確である。
といったことがあげられます。
リフォームのデメリット
- 家の状態によっては、耐震性・耐久性・断熱性を十分に高められないことがある。
- 間取り変更の自由度が限られる。
- 修繕箇所が多数見つかり、総費用が膨らむことがある。
といったことがあげられます。
リフォームを選ぶ方が良い場合とは
リフォームは軽微なものならば、建て替えよりもはるかに費用を抑えられます。しかし、積み重ねていくと新築よりも費用が高くなってしまうこともあります。また、高額のリフォームを施しても、数年後には結局建て替えなければならないというケースも少なくありません。
現在の状況が以下の項目に当てはまるならば、リフォームを優先したほうが良いかもしれません。
- 今の住居に住み続けるか決まっていないうえに、家を継承する人が決まっていない場合
- 今の形の家に思い入れがある場合
- 予算を低く抑えたい場合
- 現在の住まいについての不満が部分的な場合
- 建物診断の結果、まだ十分良好だった場合
- 1981年6月1日以降に確認申請を出した新耐震基準の建物の場合
- 建築基準法や都市計画法など現行法規制で新築ができない場合
売却する

今の住居を手放して自らは他の場所へ引っ越す方法です。
売却のメリット
- 一時的にまとまった額の金銭が手に入る。
- 次の住居を自由に選べる。
といったことがあげられます。
売却のデメリット
- 売却先がスムーズに見つからないと時間がかかる上に金額も安くなる。
- 買い戻すことはまず不可能。
- 引越し先でお金がかかる。
といったことがあげられます。
売却を選ぶほうが良い場合とは
良い売却先が見つかれば新しい生活を開始できます。しかし、移転した先でもお金が必要になることは変わりません。住宅は「人生最大の買い物」と言われることがありますが、売却するとしたら自分にとって「最大の売り物」になるかもしれないので冷静な判断が必要です。
現在の状況が以下の項目に当てはまるならば、売却することが最良の選択になるかもしれません。
- 今の住居に住み続けることはないと考えている場合
- 今の土地に思い入れがない場合
- 相場より高く売れる見込みがある場合
- 住宅をコンパクトにして、代わりに金銭を手にしたい場合。
- 自分にとってはもう住みたくないが、欲しがる人はいるだろうと考えられる場合
- 地域に開発計画があり、しばらくは住めるが住み続けられる可能性がない場合。
現状を確認する
状況によっては建て替えが不可能な場合もあります。
住宅になにか手を施したいと考えたとき、まずしなければならないのは現状を把握することです。
住宅の種類別の法定耐用年数
以下は国税庁の減価償却費 耐用年数(建物/建物附属設備)のページから抜粋してまとめた、住宅の耐用年数です。
木造・合成樹脂造のもの | 22年 |
木骨モルタル造のもの | 20年 |
金属造(鉄骨造)骨格材の肉厚3㎜以下 | 19年 |
金属造(鉄骨造)骨格材の肉厚3㎜以上4㎜未満 | 27年 |
鉄筋コンクリート造のもの 鉄骨鉄筋コンクリート造のもの | 47年 |
マンションにも適用されるので、耐用年数は47年であることが多いです。
再建築不可や旧耐震基準
1981年(昭和56年)に新しい耐震基準が制定されたため、それ以前に建てられた家は、大規模な耐震リフォームが必要になることが多いです。また、法的に建て替えができない土地や、法改正により以前より小さな家しか建てられなくなっているケースもあります。
これらの情報がわからないまま、建て替えかリフォームかで悩んでも答えは出ません。まずは、専門家に現在の家の状態を調査してもらい、自宅の状況を知ることが適切な判断の第一歩です。
ひと目見るようなおおまかな判断なら無料ですが、依頼する場合の診断費用は5万円から、詳細な調査の場合は10万円からが目安です。この調査を通じて、リフォームに多大な費用がかかり過ぎるのか、まだまだ長持ちするのか、ある程度の判断ができるでしょう。
結局どうすればよいのか
ライフプラン(生涯設計)と向き合い、何年住むための建て替え・リフォームなのか、今後その家をどのように使うのかを想定し、かけられる予算を把握するとより良い選択が見えてきます。
ローンを利用する場合、新築と同じく、どのくらい借入でき、無理なく返済できるかを確認するとさらによくわかります。
リフォーム工事は住みながら進めるのが一般的ですが、工事の規模や内容によっては仮住まいを用意しなければならない場合もあります。家具やカーテンの購入費用、引っ越し費用など、工事費以外にもお金がかかることを踏まえて資金計画を立てましょう。
国や自治体では建て替え・リフォーム工事向けの補助金・支援制度が設けられているので、適用できることがわかれば金銭面の悩みが減るかもしれません。
不動産に関する悩みは、後回しにして得をすることはめったにありません。現状の住宅に不満をもった時点で、建て替え・リフォーム・売却のいずれかの行動をすることをおすすめします。
住宅アレコレでは、新築・リフォームを行えるメーカーの提案ができます。不動産売却に関する相談も可能です。
どの選択をすべきかも含めてぜひご相談ください。ご相談はこちら
