過去に火災が発生した物件の売却を考えている人の中には、「事故物件として扱われるのではないか」と不安に感じる方もいるでしょう。事故物件として見なされると、売却が困難になる可能性があるため、その扱いについて理解しておくことが重要です。
この記事では、火災が発生した物件が事故物件として認識されるかどうかについて解説し、事故物件として認識された場合の売却方法などについても紹介します。
火事が起きた物件は事故物件というわけではない
火災が起きた物件は、必ずしも「事故物件」として認識されるわけではありません。事故物件としての基準は、火災によって人の死亡が発生したかどうかです。
火災が比較的軽微で人の死亡がなかった場合、例えば火元をリフォームしたり、全焼した場合は更地にしたり、建て替えてから売却することも一般的な対応策です。これらのケースでは通常、事故物件として扱われることはありません。
ただし、火災があった土地が「災害の起こりやすい場所」として認識されることで、物件の価値が通常よりも低く評価されることがあります。さらに、火災によって人が亡くなった場合は、その不安定なイメージが残り、物件の売却価格が市場相場よりも低く設定される傾向があります。
したがって、火災が起きた物件の場合は、事故物件としての扱いを避けるために、適切な対応を検討するとともに、市場価値の影響を理解して売却活動を進めることが重要です。
死者が出ると事故物件に
火事によって死者が出た物件は、「瑕疵(かし)がある」とみなされます。不動産に関連する瑕疵には、以下の4種類があります。
- 心理的瑕疵:自殺、事故死、殺人など過去の忌まわしい事故によって住み心地を欠く状態
- 環境的瑕疵:火葬場・葬儀場などの嫌悪施設が近くにある、または騒音・異臭などで住み心地を欠く状態
- 物理的瑕疵:雨漏り、壁のひび割れ、シロアリによる腐食、土壌汚染などの物理的な欠陥
- 法律的瑕疵:建築基準法、消防法、都市計画法などの法律・法令に違反している状態
火事による人の死は、「心理的瑕疵」に該当します。
事故物件には告知義務がある
事故物件を売却する際には、売主は契約を締結する前に、過去に人の死に関連する事故が発生したことを買主に告知する「告知義務」が課されます。
賃貸の場合、告知義務の期間は事故の発生から3年と明示されていますが、売買の場合は具体的な期間が定められていません。つまり、売主は事故物件であることを買主に告知する義務が、経過期間に関係なく存在するということです。
もし売買後に買主が事故物件であることを知った場合、訴訟に至る可能性もあるため、売主は十分に注意する必要があります。
近隣で起きた火事を告知しなければならない場合も
隣接する住戸やマンションの隣の部屋で火災が発生し、人が亡くなった場合、「告知義務は不要」と考える人もいるかもしれません。
しかし、必ずしも「不要である」とは言い切れません。直接的な関係がなくても、隣接する住戸や隣の部屋で火災が起きて死者が出た場合、買主が不快に感じる可能性が高いためです。一般的には「心理的瑕疵が発生する」と考えられるため、「告知義務がある」と認識しておいた方が良いでしょう。
告知義務はボヤの場合にもあるか
ボヤ程度で人の死が発生していない場合、原則として告知義務はありません。しかし、心理的瑕疵の捉え方は人それぞれで異なるため、不動産会社に「火事があった」と伝えておくことをおすすめします。
また、建物が火事でダメージを受けている可能性も高いため、買主とのトラブルを防ぐためにも、「ボヤがあったこと」や「実施した修繕内容」を不動産会社に伝えておくと安心です。
火事の起きた物件をうまく売却する方法
火事の起きた物件は印象が悪いため、人の死が発生していない場合でも相場より価格が安くなることが一般的です。しかし、工夫次第で高く売却することも可能です。
火事の起きた物件をできる限り高い金額で売却するためには、以下の3つのポイントを押さえておくことが重要です。それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
火災保険でしっかり修繕しておく
火災の跡が残っている場合、その印象が強く残り、売却価格に影響を与える可能性が高いです。しかし、火災保険に加入していれば、ボヤ程度の破損であれば修繕によって物件をきれいな状態に戻すことができます。
過去に火事が起きたという事実は消えませんが、見た目がきれいな物件であれば火事を気にしない人もいます。そうなると、相場に近い価格で売却できる可能性があるため、修繕をしっかり行ってから売却するようにしましょう。
心理的瑕疵が悪い印象にならない方法で売却する
火事のあった物件は、どうしても印象が良くありません。物件を修繕したり、建て直したり、建物を解体して土地として売り出しても、心理的瑕疵の影響で価格が相場より安くなりやすいです。
そこで、居住用ではなく、駐車場やレンタルスペースとして売却する方法を考えてみましょう。居住用でなければ心理的な不快感が小さく、心理的瑕疵が価格に与える影響を最小限に抑えられる可能性が高いです。
複数社に相談する
不動産会社の中には、心理的瑕疵のある物件の売却を得意としているところもあり、査定価格が異なります。少しでも高く売却するためには、複数の不動産会社に査定を依頼すると良いでしょう。ただし、複数社に見積もりを依頼するには手間と時間がかかります。
まとめ
火事が起きた物件は、必ずしも事故物件として扱われるわけではありません。人の死に関係する火事の場合は事故物件に該当しますが、ボヤ程度であれば該当しないため、原則として告知義務も課されません。しかし、心理的瑕疵の捉え方は買主によって異なるため、事故物件でない場合でも価格に影響が出る可能性があります。
火事が発生した物件を少しでも高く売却したい場合、売却方法や高く売るためのポイントを押さえてから売却に臨むと良いでしょう。