投資用マンションの最適な売却タイミングとは

居住用マンションの場合、転勤や家族の事情などで売却のタイミングが決まることがほとんどです。しかし、投資用マンションにはそのような決まった売却タイミングがなく、オーナー自身が売却の時期を決定する必要があります。

この記事では、建物の状態や社会情勢、キャッシュフローなどの観点から、投資用マンションの売却タイミングについて詳しく解説します。さらに、投資用マンションの売却方法についても説明しますので、これから投資用マンションの購入を考えている方や、売却タイミングを知りたい方はぜひ参考にしてください。

投資用マンション売却のタイミング

まず初めに、投資用マンションの売却タイミングについて説明します。

投資用マンションの売却タイミングは、主に次の6つのポイントに分けられます。

  • 建物の大規模修繕の前後
  • 収益が購入価格を上回ったとき
  • 低金利のとき
  • 相場家賃より高いにも関わらず満室のとき
  • 空室が続いているとき
  • デッドクロスを迎えたとき

一見すると売却には不向きと思えるタイミングでも、売却する理由や意義が存在します。それぞれのタイミングについて詳しく見ていきましょう。

大規模修繕の前後

マンションでは、一般的に10~15年ごとに外壁塗装や屋上防水、配管交換などの大規模修繕が行われます。これには多額の費用がかかるため、区分所有者から毎月の管理費と共に修繕積立金を徴収しています。

しかし、実際の修繕費用が計画よりも高くなることがあり、その結果、修繕後に修繕積立金が増額されることがあります。収益があまり良くない投資用マンションの場合、修繕積立金の増額は収益をさらに圧迫する可能性があります。このため、大規模修繕前に売却するという方法があります。

一方で、大規模修繕が行われるとマンションの資産価値が上がることがあり、その場合、修繕前よりも高い値段で売却できる可能性があります。高値での売却を狙うなら、大規模修繕後のほうが良いでしょう。修繕前に売却するか修繕後に売却するかは、修繕積立金の費用、これまでの賃貸収益、売却額を考慮して判断することが重要です。

初めての大規模修繕は築10~20年の間に行われることが多いです。築20年以内の物件であれば、住宅ローンの借入期間35年の対象となるため、買い手がつきやすいというメリットもあります。

収益が購入価格を上回ったとき

収益の累計や売却額がプラスとなり、投資が成功して利益が出ているときは、売却のタイミングと言えます。投資用マンションを購入してからの収益の合計額や売却見込み額が物件の購入額を上回ったときに売却し、利益を確定させると良いでしょう。

売却後は、投資活動を一時停止するか、売却で得た収益を次の投資用物件の資金に充てるという選択肢もあります。

低金利のとき

投資用物件の査定によく用いられる方法が収益還元法です。収益還元法による不動産価格は、1年間の純利益を還元利回り(NOI利回り)で割ることで算出されます。

NOI利回りは金利とリスクプレミアムの合計で決まるため、金利が低いと分母が小さくなり、結果として収益還元法による不動産価格が上がります。

収益還元法で算出された不動産価格が高い場合、投資家は利益を期待して物件を購入しやすくなります。投資用マンションの売却を検討しているなら、金利が上がる前に売却するのが良いでしょう。

相場家賃より高いにも関わらず満室のとき

周辺の賃貸物件の相場家賃より高めの家賃を設定しているにもかかわらず、満室状態が続いている物件は、人気物件と言えます。

このような物件は空室リスクが少なく、高めの賃料が得られる好物件と見なされるため、購入を希望する投資家が多くなります。購入希望者が多ければ多いほど、強気の価格設定でも売却できる可能性が高まります。

空室が続いているとき

相場家賃より高いにもかかわらず満室が続いているときに売却するのは、利益を確定するためです。反対に、空室が続いている場合は、損失を増やさないために売却するほうが良い場合があります。これがいわゆる「損切り」です。

空き室であれば内見対応がしやすく、リフォームやリノベーションを前提とした買い手を見つけやすくなります。家賃を下げて入居者を待つよりも、売却したほうが損失を抑えられると判断される場合は、売却を検討しましょう。

デッドクロスを迎えたとき

デッドクロスとは、投資用物件の減価償却費がローンの元金返済額を上回る状態のことです。このデッドクロスを迎えたときも、投資用マンションを売却するタイミングのひとつと考えられます。

経費として計上できる減価償却費とローンの利息分が多いうちは節税効果がありますが、これらは年々減少します。経費として計上できない元金返済額の割合が増えると、帳簿上は利益が出ているのに実際の資金繰りが悪化する可能性があります。

キャッシュフローを確認し、デッドクロスが近づいている場合は、投資用物件の売却を検討するのが良いでしょう。

投資用マンションの売却方法

投資用と入っても売却方法自体は他の不動産と変わりません。くわしくはこちら→物件を売却する流れ

しかし、投資用物件ならではの特徴もありますので、売却を検討する際には事前に把握しておくことが重要です。

相場を調べる際の注意

売却を検討する場合、まず相場価格を調査します。不動産情報ポータルサイトや、不動産流通機構が運営するレインズ・マーケット・インフォメーションなどで成約相場価格を確認しましょう。ただし、レインズ・マーケット・インフォメーションでは投資用物件のみを絞り込むことができません。不動産ポータルサイトや収益物件サイトでは、投資用物件は「オーナーチェンジ物件」として表示され、賃貸人がいる場合は現況が「賃貸中」と表示されます。それらを探して比較することになります。

不動産会社に依頼する際の注意

投資用物件の売買仲介を扱っていない不動産会社もあります。一方で投資用物件のみしか扱っていない会社もあるので、査定を依頼する段階から信頼できる会社を見極めましょう。

売却活動中の注意

媒介契約を締結したら、不動産会社による売却活動が始まります。売主は物件の情報や修繕履歴などをまとめ、不動産会社に提供します。

売却活動は不動産会社の営業や広告、宣伝活動が中心です。購入希望者が現れた場合、交渉は不動産会社の担当者が行いますが、最終的な売却の決定は売主に委ねられます。不動産会社の担当者と綿密に相談し、交渉を進めましょう。

入居者への対応の注意

投資用マンションでは、入居者(賃借人)がいる状態での売却が一般的です。入居者がいても、退去を求める必要はありません。所有権の移転登記を行うことで、物件引き渡しを行うことができます。


新しい所有者は賃貸人(オーナー)としての地位を引き継ぎますので、入居者に変更を通知する必要があります。

賃貸人の地位承継により、入居者からの賃料や敷金などの権利が新しい所有者に引き継がれます。

ただし、未払いの賃料などの債権がある場合、それらは自動的に新しい所有者に引き継がれるわけではありませんので、注意が必要です。債権も引き継ぐ場合には、新しい所有者と債権譲渡契約を締結し、賃貸人に債権譲渡通知を行う必要があります。

ローンが残っている場合の売却方法

投資用マンションの売却において、ローンが残っている場合の売却方法は一般的な売却方法と大きく異なりません。ローンが残っていても、売却の手続きは同様です。

ただし、ローンが残っている物件には金融機関が設定した抵当権が付いているため、売却までに抵当権を抹消する必要があります。抵当権が登記されたままの物件は購入者にとってリスクが高いため、売買契約は抵当権の抹消を前提とすることが一般的です。

売却代金でローンを完済する場合は、事前にローンを組んでいる金融機関と相談し、決済や抵当権の抹消、物件引き渡しを同日中に行えるように準備する必要があります。

投資用マンション売却にかかる費用と税金の注意点

通常の不動産売却時も様々な費用と税金がかかります→物件を売却する流れ

ここでは、特に投資用マンションを売却する際に重要となるポイントについて説明します。

ローンの一括返済手数料

投資用マンションの売却時には、残っているローンを完済し、抵当権を解除する必要があります。ローンを一括返済する際には、多くの金融機関で一括返済手数料がかかります。

一括返済手数料は、ローンの額によって異なりますが、一般的には10,000〜30,000円程度が相場です。

抵当権抹消費用等にかかる費用

ローンを完済して抵当権を外す際に必要なのが、抵当権抹消に関する費用です。抵当権抹消にかかる登録免許税は、不動産1件につき1,000円です。ただし、家やマンションの場合は土地と建物の2つに分かれるため、合計2,000円になります。

抵当権抹消手続きは自分で行うことも可能ですが、売却代金でローンの残額を支払う場合は、売却代金の受け取りとローンの完済、抵当権抹消、所有権移転登記を同時に行う必要があります。そのため、通常は司法書士に依頼することになります。司法書士への抵当権抹消手続きの依頼費用は、一般的に10,000円から15,000円程度が相場です。

譲渡所得税

不動産を売却して利益が生じた場合、売却の翌年の確定申告で所得税と住民税から成る譲渡所得税を納める必要があります。

ただし、譲渡所得税は売却代金全額に課されるわけではありません。物件を購入した際の費用(取得費)や売却にかかった費用(譲渡費用)を差し引いた売却益(課税譲渡所得)に、所有期間に応じた税率を乗じて算出されます。

譲渡所得税の計算式は以下となります。

  • 課税譲渡所得=売却代金-(取得費+譲渡費用)
  • 譲渡所得税=課税譲渡所得×譲渡所得税の税率

譲渡(売却)が行われた年の1月1日時点での所有期間によって、課税の対象となる所得の性質が異なります。所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得税率が適用され、5年を超える場合は長期譲渡所得税率が適用されます。

所有期間所得税の税率住民税の税率
所有期間5年以下の場合30.63%
※復興所得税を含む
9%
所有期間5年を超える場合15.315%
※復興所得税を含む
5%

事業用の資産を買い換えたときの特例

投資用マンションの売却には、居住用マンションに適用される「マイホームの場合の10年以上の所有に対する軽減税率」や「マイホーム売却時の3,000万円の特別控除」などの制度は適用されません。

ただし、「事業用の資産を買い替えたときの特例」が適用される場合があります。この特例は、事業用の不動産を買い替えた際に一定の条件を満たすと、譲渡益の一部に対する課税を将来に繰り延べることができるものです。ただし、これは免税や減税ではなく、譲渡所得の課税を将来に繰り延べるものですので、注意が必要です。

投資用マンションを売却したあとの確定申告

投資用マンションを売却し、売却益が生じた場合は、翌年に確定申告を行って譲渡所得税を納めます。事業用物件の売却では、マイホームの売却時のような損益通算や特別控除が適用されないため、売却益が出ない場合は確定申告の必要はありません。

投資用マンションの売却で利益が発生した場合の確定申告の手続きは以下の通りです。

  • 確定申告に必要な書類を準備する
  • 譲渡所得を計算する
  • 確定申告書類を作成して税務署に提出する

確定申告に必要な書類は、税務署から入手するものと自分で準備するものがあります。自分で用意する書類には、売買時の契約書や売買に関連する費用の領収書などが含まれます。これらの書類は紛失しないように保管しておくことが重要です。

まとめ

投資用マンションは居住用のマンションとは異なり、収益を生み出すことが主な目的です。そのため、利益を確保する売却タイミングや損失を防ぐ売却タイミングを逃さないことが重要です。

売却には書類の準備や金融機関との相談、ローンの手続きなど、多くの準備が必要です。ここで説明した内容を参考にして、適切なタイミングで売却を進められるように準備をしておきましょう。

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