賃貸併用住宅とは、オーナーが住めるマイホーム部分と借り主が住める賃貸住宅部分の両方を持っている住宅のことです。
賃貸住宅からの家賃収入を住宅ローンの返済に充てられて土地を有効活用できるというメリットがありますが、一方で「やめたほうがいい」と言われるリスクもあります。
この記事では、賃貸併用住宅を建てることで得られるメリットや注意点を紹介していきます。
そもそも賃貸併用住宅とは
賃貸併用住宅とは、自宅部分と賃貸部分を併せ持つ住宅のことです。
土地の広さや形状、オーナーの希望により、「建物の1階部分のみ自宅として使用する4階建て」や「マンションとして建て、その一室を自宅として使用する」等様々なプランが考えられます。
「自宅兼アパート」や「賃貸付き住宅」とも呼ばれ、マイホームを持ちながら不動産収入が得られるのが特徴です。
賃貸併用住宅が適しているケース
賃貸併用住宅に適しているケースはそれほど多くありません。
以下のパターンに当てはまる場合は検討に値します。
- 利便性が高く広い土地を所有している
- マイホームに住みながら収入を得たい
- 相続税対策をしたい
広く利便性の高い土地を所有している方も、賃貸併用住宅の建設に適しています。駅から近く、生活に必要な施設が揃っていれば、安定した経営が期待できるからです。また、駅から離れている場合でも、広い土地があれば十分な駐車スペースを確保できます。
家の建て替えを検討しているけれど土地をいっぱいまで使った大きい住居スペースは必要じゃない。でも土地を手放したいわけではないという方にはぴったりな方法といえます。
賃貸併用住宅の初期費用
賃貸併用住宅の初期費用は、一般の住宅よりも高くなることが一般的です。水回りの設備などを複数設置するため、坪単価が上がる傾向にあります。
さらに、建築時には本体工事費に加えて、付帯工事費や諸費用も必要です。
賃貸併用住宅のランニングコスト
賃貸併用住宅のランニングコストには、固定資産税、修繕費、管理費などが含まれます。また、火災保険をはじめとする損害保険料も必要です。
住宅ローンを利用する場合、月々のローン返済も考慮する必要があります。
賃貸併用住宅の利回りは、これらのランニングコストと初期費用を考慮し、家賃収入などと照らし合わせて試算します。
現実的な資金計画を立てるためには、まず自分の予算や要望に合った住宅プランを立ててくれるハウスメーカーや工務店を見つけることが大切です。
賃貸併用住宅の注意点
賃貸併用住宅は、家賃収入や土地の有効活用が期待できる一方で、失敗例も多くあります。
失敗の原因として挙げられるデメリットや注意点を見ていきます。
自宅部分の設計の自由度が下がる
賃貸併用住宅は、収益性を考慮するほど自宅の設計に制約が生じやすくなります。出入り口の場所や窓の位置、間取りなど、一般的なマイホームのように自由な設計が難しいケースが多いです。
特に、住宅ローンを利用して賃貸併用住宅を建てる場合、多くの住宅ローンでは建物全体の50%以上を自宅部分として確保することが条件になっています。有利な金利でローンを組める一方で、自宅部分と賃貸部分のバランスをとるのが難しい点はデメリットの一つです。
入居者トラブルのリスクがある
賃貸併用住宅では、家賃滞納・騒音問題・無断でのペット飼育などのトラブルが起こる可能性があります。
特に入居者との距離が近いため、オーナーは直接的に対応する必要があるかもしれません。管理業務を専門業者に委託していても、入居者から直接苦情を受けることがあります。
入居者トラブルを未然に防ぐためには、「居住時の禁止事項を明確にする」「入居前の厳格な審査を実施する」といった対策もあり、トラブルを回避し、賃貸併用住宅の運営をスムーズにするために重要ですが完全に防げる保証はありません。
空室リスクがある
賃貸住宅経営において考慮すべき重要な要素の一つが空室のリスクです。
特に、利便性の悪い立地では空室リスクが高まります。建築を始める前には、周辺エリアの賃貸動向を十分に調査し、賃貸需要を正確に把握することが重要です。
エリアの状況に応じて、入居者が求める設備や仕様を取り入れることで、空室リスクを抑えることができるでしょう。例えば、交通アクセスの良さや生活利便性の向上、セキュリティの強化などは、入居者の関心を引き、空室の発生を減少させる助けとなります。
将来的に売却が難しい
賃貸併用住宅は一般的な住宅に比べて売却が難しい傾向があります。家賃収入を期待して投資物件を探している人にとっては自宅部分が不要で、マイホームとして中古住宅を探している人にとっては賃貸部分が不要なのでどうしても需要は低くなります。
入居者がいる場合は取り壊しも困難であり、土地としての需要も限られています。
将来的に売却を考える場合は、設計段階で間取りや価格帯を慎重に考慮する必要があります。例えば、オーナーと入居者が顔を合わせにくい間取り設計や、騒音トラブルのリスクを低減する工夫が求められます。
賃貸併用住宅を検討する際は、賃貸部分の収益性を確保することが重要です。入居者のニーズを満たし、安定した賃貸収入を見込むために、適切な設計と管理計画を立てることが必要です。
賃貸管理の手間がある
賃貸併用住宅の管理業務は多岐にわたります。例えば、家賃の入金確認やクレーム対応、入居者の更新手続きなどが含まれます。特に戸数が少ない場合、オーナー自身が「自主管理」を選択することもありますが、本業が別にある場合は管理業務が負担になることがあります。
そのため、専門業者に管理業務を委託する選択肢もあります。専門業者に委託することで、管理業務の効率化や適切な対応が期待できますが、その分管理費用が別途必要になります。しかし、この方法はオーナーにとって負担を軽減し、賃貸収入を安定的に確保する手段となり得ます。
賃貸併用住宅のメリット
悪いことばかりではありません。
収益をローン返済にあてられる
賃貸併用住宅は、一般の住宅と異なり、建設後に家賃収入が得られます。
場合によっては賃料収入がローンの支払いに充てられ、経営が軌道に乗ればローンが完済された後も副収入が得られます。
賃貸住宅経営が安定すれば、リタイア後の生活に余裕が生まれるという利点があります。
節税効果がある
賃貸併用住宅では、固定資産税が軽減される特例があります。
具体的には、
- 1戸あたりの土地面積が200平米以内の場合、その評価額は通常の6分の1になります。
- 200平米を超える部分については、評価額が通常の3分の1に軽減されます。
さらに、特定の条件を満たすと最大330平米までの宅地について、評価額が80%減額される「小規模宅地等の特例」が適用されます。
相続税の評価額は、賃貸併用住宅の場合、自宅よりも低く評価されることがあり、その結果、相続税の負担を軽減することができます。
住宅ローンを利用した賃貸経営もできる
一般的に、賃貸物件を建設する際に利用するローンは「アパートローン」に該当します。
賃貸併用住宅の場合、自宅部分が建物全体の50%を占めていれば、住宅ローンの利用が可能です。住宅ローンの主なメリットは、アパートローンよりも金利が低い点にあります。
この金利の低さにより、月々の返済額を抑えながら賃貸経営を行うことができます。さらに、住宅ローンの年末残高の0.7%を最大13年間、毎年還付として受け取れる住宅ローン控除の適用も受けられます。
家族構成の変化に対応しやすい
賃貸併用住宅は、増築や改築をすることなくライフスタイルの変化に対応できます。
空室があれば二世帯住宅としても利用可能ですし、賃貸部分がワンルームタイプであれば、大きくなった子どものための部屋として一時的に利用することも可能です。自宅部分も貸せないわけではありません。
家づくりを検討しており、将来的に「二世帯で住む」「子供が増える」といった可能性がある方にとって、柔軟な選択肢となります。
ふたつ建てるよりも支出が抑えられる
賃貸併用住宅は、自宅と賃貸スペースを一つの建物で併せて建てることで、それぞれ別で建てるよりも支出を抑えることができます。
通常の2棟の建物と比べて、屋根面積や基礎面積が少なくて済むため、建築費用が削減されます。
将来的に賃貸経営を考えている場合、賃貸併用住宅は大きなメリットがあります。ただし、前述したデメリットも考慮しながら、計画を練ることが重要です。
まとめ
賃貸併用住宅は、自宅と賃貸部分を兼ね備えた建物で、マイホームで暮らしながら賃貸収入を得ることができます。住宅ローンを活用することで、アパートローンよりも低い金利で賃貸経営を行うことが可能です。
ただし、賃貸併用住宅にはいくつかの注意点があります。例えば、自宅部分の設計に制約が生じることや、空室リスクが高まる可能性があります。また、将来的な売却が難しい場合や、管理が手間を要することも考慮すべき点です。
賃貸併用住宅を建てる際には、メリットとデメリットをしっかり理解し、収支をシミュレーションすることが重要です。さらに、賃貸併用住宅の新築に詳しいハウスメーカーや工務店に早めに相談することで、成功の可能性を高めることができます。
注文住宅を依頼したいけれど困っていろいう方はご相談ください。