家庭の事情や家族構成の変化により、新居への買い替えを検討している方もいるでしょう。現在の住まいが賃貸物件であれば、希望する条件に合う新居が見つかり次第、購入して転居することが可能です。
しかし、現在の住まいが持ち家である場合、すぐに転居するのは難しいことがあります。特に、住宅ローンが残っている家の場合、買い替えたいと思っても希望通りに進むのか心配でしょう。
この記事では、住宅ローンが残っている家を売却して新居に買い替えることができるかについて解説します。具体的な方法や手順も詳しく解説するので、住宅ローンが残っている家の買い替えを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
ローンが残っていても新居を買える条件
住宅ローンが残っている家を売却して新居に買い替えることは可能です。ただし、買い替えをするには、今の家を売却した際に住宅ローンを完済できることが条件となります。完済できなければ、買い替えは実現しません。
住宅ローンが残っていても、売却代金が残債を上回る場合(アンダーローン)は、買い替えが可能です。また、売却代金が残債を下回っている場合でも、自己資金を使って完済できれば問題ありません。
買い替えにはローン完済が必須
住宅ローンが残っている家を買い替える際の可否は、ローンを完済できるかどうかにかかっています。残債が売却代金を上回るオーバーローンの場合、買い替えは難しくなります。
例えば、残債が3,000万円で売却代金が2,500万円の場合、500万円のオーバーローンとなります。しかし、オーバーローンであっても自己資金を使って完済できれば、問題なく買い替えが可能です。
自己資金を充てても完済できない場合は、残念ながら買い替えを諦めるしかありません。オーバーローンで買い替えができない理由は、抵当権が抹消できないからです。抵当権とは、債務者が返済不能になったときに家を担保にする債権者の権利のことです。
債務者が返済不能に陥った場合、債権者である金融機関は抵当権を行使し、競売にかけられ、強制的に売却されます。抵当権は住宅ローンを完済した時に初めて抹消されます。
抵当権を抹消できない限り、家を自由に売ることができないため、買い替えを行うには住宅ローンの完済が必須となります。
住宅ローン残債の確認
家の買い替えを希望していても、住宅ローンの残債によっては難しい場合があります。そのため、まずは現在の残債を確認することが重要です。残債を確認する主な方法は次の通りです。
- 金融機関の窓口
- 返済予定表
- 残高証明書
- ネットバンキング
住宅ローンの残債は、借入先の金融機関窓口で確認できます。内容が個人情報に該当するため、厳重な本人確認が行われるでしょう。手元に運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類を準備しておけば、スムーズに問い合わせできます。
返済予定表とは、毎月の返済額や借入金残高などが記載されている書類です。最初の予定表は、借入れ日から1~2週間程度で金融機関から届きます。送付のタイミングは金融機関によって異なりますが、その後は定期的に発送されます。
残高証明書とは、その年の12月31日時点での住宅ローンの残高が記載された書類です。ただし、すべての債務者に届くわけではなく、10年以上の契約がある住宅ローン控除の対象者に対して送付されます。手元に届くのは、年末調整や確定申告の時期に近い毎年10月頃です。
また、住宅ローンの残債は、ネットバンキングでも確認できます。事前に登録していれば、いつでも確認できるので便利です。
家を買い替える手順
ローンの返済と新居の購入が可能だとわかっても、手順の踏み方は3種類あります。
売り先行型
売り先行型とは、今の家を売ったあとで新居を買う方法です。
今の家を先に売ることで、新居を購入する際の資金計画が立てやすくなります。しかし、希望条件に合う新居がすぐに見つかるとは限りません。
新居を見つけるまでに時間がかかると、今の家を売った後に仮住まいが必要になる可能性があります。仮住まいに住むためには、家賃や引越し代がかかります。また、仮住まいと新居の2回分引越しが必要になるため、その分の費用も考慮しておく必要があります。
ローンを二重に組み事ができない、資金に余裕がない人にとっては自動的にこのパターンになります。
買い先行型
買い先行型は、先に新居を買ってから今の家を売る方法です。
すでに新居が決まっている場合、売り先行型のように仮住まいを準備する心配がなく、引越しも1回で済みます。今の家の引渡し時期を考慮する必要がないため、希望条件に合う新居を時間をかけて見つけることが可能です。
その一方で、今の家を売り出してもすぐに買い手が見つかるとは限りません。売却の目途が立たない場合、今の家と新居の住宅ローンや税金を二重に支払う必要が出てくる可能性があります。
気に入った物件を早く手に入れたいときにこのパターンになります。しかし、資金に余裕が必要です。
同時並行型
同時並行型は、今の家の売却活動をおこないながら新居の購入を同時に進めていく方法です。
売却と購入のタイミングを合わせられるため、仮住まいの準備が不要で、ローンを二重に返済する心配もなく、スムーズに住み替えが完了できます。ただし、同時並行型は売り先行型や買い先行型に比べて難しいと言えます。
手続きが同時進行になるため、各物件の売り手と買い手、金融機関の担当者、司法書士などのスケジュール調整や資金管理が複雑になります。
知人や親族など融通の効く相手との取引で可能なパターンです。
家を買い替える際に利用できるローン
今の家の住宅ローンが完済できても、新居を購入するためには資金が必要です。住宅ローンの残債のために、住み替えローンやつなぎ融資というものが用意されており、それらを利用できる可能性があります。
住み替えローン
住み替えローンとは、新居の住宅ローンに現在の家の残債を上乗せできるローンのことです。
通常、住宅ローンを完済できない場合は抵当権を抹消できず、買替えが難しいです。しかし、買替ローンを利用すれば、今の家を売却し新居を購入することが可能です。買替ローンでは、今のローンに新たな借入額を上乗せできるため、二重に返済する心配がありません。ただし、通常の住宅ローンよりも金利が高く設定され、審査も厳しいのが現状です。
つなぎ融資
つなぎ融資は、今の家の売却と新居の購入のタイミングが合わない場合に利用される融資のことです。買い先行型では、今の家が売れるまでに必要な資金を準備できない可能性があります。購入資金が期日までに用意できない場合、希望条件に合う新居の購入を断念せざるを得ません。
しかし、つなぎ融資を利用すれば、今の家が売れるまでの期間に必要な融資を受けられます。そのため、買い時を逃す心配がありません。ただし、通常の住宅ローンよりも金利が高く、期間内に元金を一括返済する必要があります。
借りられる期間は一般的に1年以内で、数ヶ月のケースが多いです。融資期間中は利息の支払いのみで、期間が長くなるほど負担も増えます。また、つなぎ融資は住宅ローン控除の対象外です。
住宅ローンが残っている家を買い替える際の注意点
住宅ローンが残っている家を買い替える際は、残債を確認するのはもちろんのこと、いくつかの注意点があります。以下では、残債がある家の買い替え時にローンを利用する際の注意点を解説します。
住み替えローンは審査が厳しい
住宅ローンが残っている家を買い替える際には、住み替えローンやつなぎ融資を利用することも考えられます。住み替えローンは、通常の住宅ローンと同様に金融機関の審査を受ける必要があります。
ただし、既存の残債に新居の購入費用が上乗せされるため、担保にする家の価値を超える融資を受けることになります。そのため、通常の住宅ローンよりも審査が厳しくなっています。
また、住み替えローンの申し込み時には信用情報機関に情報が提供されるため、一度落ちると再チャレンジが難しくなります。審査に通りやすくするためには、頭金を準備すると有利です。また、今の住宅ローンと同じ金融機関を利用する方法もあります。
審査に落ちると他での借り入れが難しくなるため、事前に利用条件を確認しておくことが重要です。
つなぎ融資は住宅ローン控除の対象外
住宅ローンが残っている家を買い替える際には、住み替えローンのほかにつなぎ融資を利用する方法もあります。住み替えローンでは、入居から10年間にわたって住宅ローン控除を受けることができます。
しかし、つなぎ融資は住宅ローン控除の対象外ですので、注意が必要です。これは、つなぎ融資の借入期間が通常数ヶ月であり、長くても1年程度であるためです。住宅ローン控除の要件には借入期間が10年以上という条件がありますから、つなぎ融資は対象外となります。
特例と住宅ローン控除が併用できないケースもある
家を買い替える場合、売却と購入それぞれに税金がかかるため、単に新居を購入する場合と比較して税負担が大きくなる可能性があります。税負担を軽減するためには、減税措置を利用することが有効です。
住み替え時に利用できる減税措置は、以下の通りです。
- 3,000万円特別控除
- 買換え特例
- 譲渡損失の損益通算
- 所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
減税措置を上手に活用することで、節税につながります。ただし、一部の減税措置は住宅ローン控除と併用できないので注意が必要です。具体的には、3,000万円特別控除と、所有期間が10年を超える居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例が該当します。
まとめ
アンダーローンの状態で家を買い替えられる状態のときはローン返済の心配はありませんが、同価値の物件も値上がりしていて希望通りの家が見つかるかはわかりません。慎重に検討しましょう。
オーバーローンの状態で買い替えを検討する理由は何らかの大きな事情があるかもしれません。しかし、住宅ローンが残っている家の買い替えには多くのデメリットが存在するため、注意が必要です。たとえ審査が通ったとしても、通常より金利が高いなど将来的なデメリットを把握した上で、後々困らないように慎重に検討しましょう。